Virtual Performance Solution 導入事例 公益財団法人 鉄道総合技術研究所

Virtual Performance
Ground Transportation

 

公益財団法人鉄道総合技術研究所の事例を紹介します。

構造解析統合ソリューション
使用ソフト:Virtual Performance Solution

公益財団法人 鉄道総合技術研究所 動力システム研究室 笹倉実氏に、鉄道の騒音源とその対策について詳しく聞きました。

 

鉄道総合技術研究所について

公益財団法人 鉄道総合技術研究所は、旧国鉄の鉄道技術研究所などから業務を引き継ぐ形で1987年に発足した研究機関です。その源流は1907年設立の帝国鉄道庁鉄道調査所にまで遡り、以来100年以上にわたり日本の鉄道を進化させるために研究を続けています。職員数527名、事業予算185億円(2017年度)。


 

鉄道での主な騒音源

― 鉄道騒音は、具体的にはどこから、どんな音が出ているのでしょうか。

鉄道で発生する振動や騒音は、空力的な要因で発生するものや、レールや車輪から発生するものなど様々あります。騒音の発生源は大きくわけて次の表の通りです。近年客車は、ごく一部を除いてなくなり、 動力分散方式である電車がほとんどを占めるようになりました。電車には付随車のほかに、車両の屋根上にパンタグラフ、車両床下の台車部に駆動装置(モーターと歯車装置)を搭載する電動車と呼ばれる車両があります。

図1 車両周りの騒音源


 

表1 主な4つの騒音源

  項目 内容
(1) 上部空力騒音 車体のまわりを空気が流れることにより生じる音。含むトンネル騒音。
(2) 集電系騒音 パンタグラフなど集電装置から生じる音
(3) 車両下部騒音 駆動装置や車輪、制御装置など床下から発する音。
(4) 構造物騒音 鉄橋や高架橋などを走るとき、これらの振動から出る音


 

 車両下部騒音とは

― 列車の騒音源その3.「車両下部騒音」とは

「車両下部騒音」は、駆動装置から出る「駆動系騒音」、車輪とレールの凹凸から出る「転動騒音」、制御装置など床下から発生する騒音があります。今回は、駆動系騒音のうち、特に歯車騒音を中心に説明いたします。


 

 電車の駆動装置と歯車騒音の特徴

― 歯車騒音について詳しくお教えください。

電車の駆動装置の一例を示します(図2)。これは車軸とモーターが平行になるように配置された平行カルダンと呼ばれる方式で、大半の電車がこの方式をとっています。モーターから、たわみ継手を介して車軸側の歯車装置を駆動する方式です。歯車装置は小歯車と大歯車で構成されており、自動車のような多段の変速機構を必要としないので、構造的にはシンプルです。
モーターから歯車軸に回転トルクを与えると小歯車は回転し、歯を介して,相互にかみ合い,回転しながら, 大歯車側に力が伝達されます。かみ合いの過程では、お互いの歯面は、接触を始め、回転が進むにつれ転がりとともに,むしろ滑る感じで接触点が移動して、再び離れます。このとき歯車にわずかな回転数変動が発生します。これが、歯車系から発生する振動の原因の一つとなります。この変動が図①→⑥の流れに示すように歯車箱へ振動伝搬して、その表面から音が発生するメカニズムが考えられます。

図2 電車の駆動装置(平行カルダン方式)

 

 

図3 電車用歯車装置のしくみと音と振動の発生メカニズム

 

 モーター騒音との関係

― 電車の駆動系にはモーターもありますが、その騒音との関係はどのようになっていますか。

電車用の多くのモーターには回転軸に冷却ファンを取り付けております。速度が速くなるとファン回転数も高くなり、通風に伴う騒音も大きくなります。近年の永久磁石同期モーター等では、高効率化に伴って、発熱を減らすことができるようになり、従来のように冷却ファンで冷却風を取り込まずに、表面から放熱する方式が可能になりました。モーター内の音が外部に漏れないような全閉構造とすることで、モーター騒音は大幅に低下します(図4)。ところがモーターの騒音を低減させると、これまでその陰に隠れていた歯車装置の音が目立ってくるようになります。そのため、現在では、歯車装置の音と振動の対策が重要になってきています。

図4 全閉形永久磁石モーター(鉄道総研試作)

 

走行している電車の歯車振動


歯車からの振動は、歯車騒音の原因になります。図5は高速で走行しているときの歯車振動の一例です。大小2つの歯車はそれぞれの歯車軸の回転数×歯車の歯数でかみ合うことになります。例えば260km/h走行では、毎秒約2200回かみ合うことになり、約2200Hz(2.2kHz)の振動成分として現れます。これをかみ合い一次周波数と呼びます。図中の丸のように、力行や減速時の特定の速度域(特定の周波数)で振動が大きくなる傾向がわかります。また、かみ合い一次周波数の倍数成分(かみ合い二次など)で振動が大きくなる場合もあります。歯車振動が歯車箱に伝搬し、騒音が発生することになります(図6)。
 

図5 走行時の歯車振動の状況

 

図6 歯車装置から発生する騒音

 

VPSを使って歯車の振動を解析

― 鉄道総合技術研究所では、日本イーエスアイの製品をどのように活用していますか。

鉄道総合技術研究所では、主にVPSのCrashモジュール(旧PAM-CRASH)を使って車両の衝突などのシミュレーションを長年実施しています。近年は、これ以外にVPSのMedysaモジュールを使って、歯車やレール・車輪などの接触系解析にも取り組んでおり、先ほどご紹介した平行カルダン方式の歯車装置の振動、騒音問題にも活用しています。歯車騒音の現象把握や伝搬メカニズムの解明は実験的には限られており、コストもかかることからシミュレーションは有用なツールです。Medysaには、スムーズコンタクト(図7)と呼ばれる歯接触面形状の曲面処理能力に優れた機能があります。その先進的な接触アルゴリズムにより、複雑な歯面形状の実機相当モデルの回転接触も精度良く再現が可能でした(図8)。また、歯車間の接触解析のみならず、ベアリング部も実車形状(弾性)モデルとして、歯車騒音で重要となる軸受部の作用力の定量的な精度向上を図りました(図9)。これらによる計算をもとに、歯車箱の音場解析も活用しております(図10)。今後は、実機にて生じていると思われる歯車軸のアライメント影響や歯車箱剛性の影響など歯車装置の総合的な解析も視野に入れています。
 

接触判定アルゴリズム

Contact Type 44
(Node-to-Segment Contact with Smooth Contact Surface)

 

特徴
  • ソルバ内部ではスムーズな連続局面で接触判定面を生成円滑に回転(接触)させることが可能

  • FEMのメッシュの離散化された接触面をスプライン補間

図7 Medysaスムーズコンタクトの概念

 

 

図8 歯面接触圧の比較(300km/h)

 

 

図9 Medysaを用いた噛合いシミュレーションと歯車箱音響解析の組み合わせ

 

 

図10 歯車箱の振動と音響のシミュレーション

 

今後の期待

― 日本イーエスアイへの今後の期待をお聞かせください。

公益財団法人 鉄道総合技術研究所
動力システム研究室 笹倉実氏


鉄道総合技術研究所では、今後も鉄道の静音性、快適性を向上させるための研究開発を継続的に取り組む所存です。VPSは、「滑らかな歯面接触を精密に再現できる点」、「構造解析モジュールであるCrashと他のVPSモジュールと親和性がある点」が優れています。統合環境で計算する場合は、VPSのデータを持っていれば他に応用が効きます。
日本イーエスアイ様には優れた製品やサポートを通じて、弊所の取り組みを後方支援していただ
くことを希望します。今後ともよろしくお願いします。


 

 

 

 

※トップに掲載の車両写真は日本イーエスアイが保持するものであり、鉄道総合技術研究所より提供されたものではありません。