Vitual Seat Solution活用事例 RENAULT 社

Virtual Seat
Ground Transportation

 

RENAULT社は、Virtual Seat Solutionを活用してシートを仮想設計しました。

シート製造快適性評価シミュレーション
使用ソフト:Virtual Seat Solution

 

PAM-COMFORTを活用したシート仮想設計

 

課題

  • 新しい座席の生産方式が妥当かどうかを、シミュレー ションを通じて検証したい。

  • 座席の快適性について様々な角度から評価したい。(座る人にとっての快適性。座席に座っているときの振動の伝達率など)。

 

評価

「Virtual Seat Solutionによるシミュレーションでは、物理的パラメータだけを使い、フィルタリングによる調整は一切行いませんでしたが、それでも精度の高いシミュレーションが可能でした。計算結果と試験の結果とがきわめて良好に一致したことにより、仮想的なプロセスが、座席の乗り心地の評価にとって有効であることが確認できました」
Renault Group、Comfort and Safety Research部門長、Jerome Makala氏

 

効果

  • 有限要素法による精度の高い計算結果

  • 座席の仮想設計方法の確立。シミュレーションによる検証

  • 開発コストの削減。開発期間の短縮

  • 生産目標の達成

 

座席の快適性は、人々が自動車を購入するときの重要な判断基準であり、自動車OEM各社でも快適な座席づくりを重視しています。凹凸の多い道路を走るときや長距離を運転するとき、あるいはそれ以外の日常的な運転のとき、座席の座り心地が良いかどうかはとても重要です。RENAULT社では、座席の快適性を数値で評価するための新しい手法として、ESIの仮想座席試作ソリューションであるVirtual Seat Solutionを採用しました。座席の仮想試作は、座席の製造、静的な着座設定、座っている状態での座席のNVH (騒音、振動、ハーシュネス) などの要素で構成されており、各要素の結果として得られた応力は、次の要素に引き継がれます。座席に対しては、トリム、ダミーの荷重、体格、振動など多くの荷重条件や、材質や形状など様々な設計変更が加えられますが、その際の座席の挙動を正確に予測するには、各ステップを有機的に連鎖させることが必要です。RENAULT社が目指したのは、座席の製造における複雑な機械的現象を忠実にモデリングすることで、材料の複雑な動的挙動を詳細に記述し、精度の高いシミュレーション結果を得ることでした。RENAULT社の技術者は、まずVirtual Seat Solution と既存の座席を使って、その座席の有限要素(FE) モデルを作成し、その複雑な機械特性、すなわち非線形材料によるフォーム材ブロックおよびスプリングの大たわみなどをシミュレートしました。これにより仮想的なプロセスだけでも、座席の動的な快適性が相当な程度まで評価できることが明らかになりました。

 

快適性の動的な試験

 

RENAULT社では、新たな座席の設計プロセスの一部として、静的荷重による座席伝達特性の動的実験を実施しています。この実験は座席の周波数応答を評価する際に有効であり、また自動車の垂直方向の加速度フィルタリングに対し、座席がどのぐらい寄与しているかを知ることができるなど、座席設計の改善と検証に役立ちます。また座席の動的な快適性を明らかにするため、この実験を人間の被験者および専用のダミーで実施することも可能です。今回の実験におけるRENAULT社の目標は、座席の伝達特性の実験の一部を、数値シミュレーションで代用することでした。

 

 

 

座席と振動のモデリング

RENAULT社は、座席の周波数応答を得るために、静的荷重を用いた座席の伝達特性を動的実験するという「リードバトック(Lead Buttock)」マネキン試験をまずシミュレートしました。ここでの「座席の周波数応答」とは、座席のスライドレールの垂直方向加速度とダミーの垂直方向加速度の応答倍率を意味します。リードバトック試験のシミュレートには、Virtual Seat Solutionを活用し、まず座席自体を詳細にモデル化しました。具体的には、座席を構成する部品の各材料の非線形的な挙動をはっきりと知るために、各材料の特性を入力し、モデルに追加しました。さらにスプリングを座席の金属製フレームに固定し、ポリウレタン製クッションフォーム材を支持させ、その後、座席の布地部分であるトリムカバーを座席に被せ、その結果として得られる平衡状態を計算しました。次に、振動伝達特性の計算を、2段階に分けて行いました。第1段階は静的な段階であり、ダミーを着座させた状態での、座席各部の応力やひずみの状態を正確に把握するために平衡状態を計算しました。この作業により、動的段階である第2段階の計算精度が向上します。第2段階では、座席とダミーとの接触面における動的伝達特性を知るために、垂直方向の加速度信号を座席レールに加えました。

 

座席の動的伝達特性

 

座席の動的の伝達特性を知るための試験は、ミドルクラスの座席を使用して実施しました。製造の際のばらつきを考慮して、公称設定と柔らかめの設定の2種類フォーム材特性を使いました。計算時間は、周波数範囲1~15Hzに対して4プロセッサクラスタ(DMP4)を使用して約20時間。計算結果と実験結果はきわめて良好に一致しました。RENAULT社は、Virtual Seat Solutionを使用して同社初となる新型座席の完全な仮想予備設計に成功したことになります。Virtual Seat Solutionによって得られた結果には満足しており、座席メーカー各社と日産自動車への、今回の手法の技術移転をすでに始めています。

「このシミュレーションは、とてもリアルです。なぜな ら、座席の複雑な機械的現象、すなわち材料の非線形性からクッションのフォーム材とスプリングの変形、カバートリムの影響にいたるまで、すべてのシミュレーションを行うことができるからです。」

「Virtual Seat Solution により、当社の目標を 満たす新型座席の設計を、短期間かつ少ない手間で、確立することができました」 
Renault Group、Comfort and Safety Research 部門長、Jerome Makala 氏